嘉數中日記第389回 平成29年12月14日
「星の王子さま」より抜粋
王子さまは驚いた。その星は、ほんとうにちっぽけだったのだ。
ここで王さまは、いったい何を治めているというのだろう。
「陛下・・・・・・」王子さまは声をかけた。「おたずねしてよろしいでしょうか・・・・・」
「たずねるよう命じる」王さまは急いで言った。
「陛下は何を治めていらっしゃるんですか?」
「すべてをだ」いともかんたんに、王さまは答えた。
「すべてを?」
王さまはさりげない身ぶりで、自分の星も、他の惑星も恒星も、ぐるりとぜんぶを示した。
「このすべてをですか?」
「このすべてをだ・・・・・」王さまは答えた。
この王さまは、絶対君主であるだけでなく、宇宙の君主でもあったわけだ。
「じゃあ、星はみんな従うんですか?」
「もちろん」王さまは答えた。「ただちに従う。従わないことは許さん」
あまりの権力に王子さまはびっくりした。もしぼくにそんな力があったら、一日に四十回どころか、七十二回でも百回でも、いや三百回でも、いすさえ動かさずに、陽が沈むところを見られただろうに!王子さまは、あとにしてきた自分の星を思い出して、少しさびしくなったので、思いきって王さまにお願いをしてみることにした。
「ぼく、夕陽を見たいんですが・・・お願いします・・・・・太陽に沈めと命令してください・・・・」
「もし予が将軍に、蝶々のように花から花へ飛べとか、悲劇を一作書けとか、海鳥になれなどと命じて、将軍が従わなかったら、悪いのは将軍か予か、どちらだ?」
「陛下です」王子さまはしっかり答えた。
「そのとおり、人にはそれぞれ、その人ができることを求めなくてはならん」王さまは言った。「権威というものは、何より道理にもとづく。もし人民に、海に行って身を投げろと命じたら、革命が起きてしまう。予の命令が道理にもとづいておるからこそ、予には服従を求める資格があるのだ。」
「それで夕陽は?」一度質問をしたらけっして忘れない王子さまが、話しをもどした。
「夕陽は、見せよう。予が命令しよう。だが予は、統治のコツとして、状況が好ましくなるまで待つのだ。」
「待つって、いつまでですか?」小さな王子さまはたずねた。
「えへん、えへん!」分厚い暦を調べながら、王さまが答えた。「えへん、えへん!だいたい・・・だいたい・・・今夜の、七時四十分である!そうすれば、太陽も予に従うことが、よくわかるであろう」
王子さまはあくびをした。夕陽が見られなくて残念だった。それに、少しつまらなくなった。
「ここではもう、することがなくなりました。」王子さまは、王さまに言った。